夏の犬は小屋の下に掘った穴に潜って過ごす。冷夏の犬は掘った穴に水が溜まって潜れないから小屋で過ごす。犬の髭は抜け落ちて鼻の先も乾いていて足指の間には毛がない。体はごわごわとした短白毛におおわれ、泥が付着し、この間などおでこに何かがついているからよくよく見てみるとそれはデスモディウム・パニキュレイタムなのであった。つまり体を清潔に保つことには無頓着なのだが、時折ピンク色のペニスを舐めていたりもする。酔った私が話しかけると迷惑そうな顔をする。ひらめいた私がまくしたてると目をぱちくりとさせる。餌はなにか適当なもの、たとえばカスタードロングパンなど、を貰っているが、そのほとんどを食べるのは小屋に入り込んだカラスや野良猫のようである。並べた前足の上に頭を載せて、飼い主の住む母家を眺めて一日のほとんどを過ごす。並べた前足の上に乗った頭の先の鼻の穴を私が二本の指でふさぐと片方の前足で私の指をのけようとする。しつこくしつこく繰り返すと前足の間に鼻の頭をつっこむ。つまらないから上唇をめくりあげて歯の確認をすると、歯には茶色い歯垢がついている。そんな犬と私は多分仲良しだと思う。