家へ帰ろうと建物のドアを開けると、外は夜だった。
ひんやりと冷たい空気の中を歩いていると、
木々の間から夜の香が漂ってくるのだった。

学校の中の大きな通りは、
暑くもなく寒くもなく
月がきれいで初夏の香が漂って
こんな時は誰もが外へ出て夜を楽しみたいのだろう、
ランニングをしたり友だちと歩いたり、
池のほとりのベンチに腰をかけて話したりしている。
そして私は家へ帰ろうとしている。

幸せだなと感じるのはこういう瞬間だ。
この素敵な空間を多くの人が感じていて、
そして私もまた多くの中の一人なのだ。
それぞれの思惑でこの空間の中に別個にいるのだけれど、
個々はこの空間の中に集約されている。